糖尿病の中高年はフレイルに気をつけろ “自己流”が災いを招く
血糖値が高いことは健康に良くないとわかっていたが、仕事を言い訳に治療せずに放ってきた。そこで定年を機に一念発起、自己流の食事制限や運動を始めたがかえって体調を崩してしまった。そんな人も多いのではないか? 「北品川藤クリニック」(東京・品川)の石原藤樹院長に話を聞いた。
商社に勤めていた田中一さん(66=仮名)は定年後すぐに体づくりを始めた。学生時代70キロだった体重が100キロ近くまで増え、ここ数年健康診断でヘモグロビンA1cが8%台寸前の値が続いていたからだ。田中さんは周囲には黙っていたが食後に急激に眠気に襲われていた。医師からも「せっかく毎年健康診断を受けているのだから、節制して糖尿病の治療をしてください。でないと意味がありませんよ」と言われていた。
田中さんがまず取り組んだのはやせるための糖質制限。何事も徹底する性質の田中さんはご飯やパン、麺類は抜いて肉類中心の食事でお腹を満たすよう努めた。運動は近所の公園での散歩で、1日1万歩を目指した。最初のうち体重は田中さんが思うようには落ちなかったが、しばらく続けるうちに徐々に落ちていった。喜んだ田中さんだったが、やがて体の異変に気がついた。膝に痛みが走るうえ、立ったり、座ったりすることがスムーズにできなくなった。立ち上がるときはテーブルや椅子につかまることが必要になり、椅子にはどすんと座ることが当たり前になった。