心毒性のある抗がん剤を使っているがん患者は心不全に注意
今年3月、一部の抗がん剤で心臓への強い副作用が出ることを受け、日本臨床腫瘍学会や日本腫瘍循環器学会が心臓に対する副作用への対応などについて初めてガイドラインをまとめました。
乳がん、肺がん、胃がん、大腸がん、悪性リンパ腫といったさまざまながんに対する標準治療で使われている「アントラサイクリン系」の抗がん剤は、使用している患者さんの約10%で副作用として心臓の機能に障害が起こり、重い心筋症を発症して心不全につながるケースが報告されています。それらを受けてつくられた今回のガイドラインでは、心不全を予防するために超音波検査や血液検査などで心臓の状態を評価することを提案し、がん治療に伴って心血管疾患が起こるリスクが中等度以上の患者については、循環器の専門医も診察するよう推奨しています。
アントラサイクリン系の抗がん剤は心筋に対する毒性=心毒性があることが知られています。投与中も含めて短期間で不整脈、心不全、心筋症などが現れるケースもあれば、投与して1年以上、中には10~20年後になって症状が出る場合もあるので、使用する際は注意が必要な抗がん剤です。