野党議員も気にせず機密費を受け取り「礼状」まで書いていた
(六月十日)中野、阿部、清水と野党の三人に説明。それぞれに「預り書」をおく。みんな「委員長の配慮に感謝」とのこと。
(六月十一日)新東京国際空港を出発。同十二日、西ドイツのボン着。
(六月十二日)午後四時半、越智委員長にホテルの部屋に呼ばれ、「後藤田官房長官に、出発の時に気をつかってもらったので礼の手紙をだしたい。書いてくれ」とのこと。越智委員長の名で万年筆で書いたところ、「各議員に署名させて一緒の名の礼状にしてくれ」とのこと。
「それはまずい。官房長官から気をつかったことは、派遣議員は表向きは知らないことですよ。それにこの文章で署名をさせるのは気の毒ですよ」というと、越智委員長は「僕が誤解されないためだ。文章はこれでよいので、署名をしてもらってくれ」と命ぜられる。各議員とも何事もなく署名、「いろいろご配慮をいただき、無事各国の議会制度、政治、経済について調査しています」との内容。
自民党議員も、野党議員も機密費の授受について疑問をもっていなかった。これが自社55年体制の日本の国会の実態であった。(おわり)