ガセ情報に踊らされたオレも同僚も部長と目を合わせられず
その球団は当初、3位指名を予定していたが、2位指名するはずだった投手を別の球団に外れ1位でもっていかれた。そのため指名順位がひとつ繰り上がったらしい。
なにが2位でいけますだ、大見え切ってガセ情報に踊らされてりゃ世話ねーよ――同僚のミスを内心、ほくそ笑んだのも束の間、今度は自分が顔色を失った。
オレの担当で7位指名する予定の選手が、6位で他球団にもっていかれたんだ。その球団が狙っているのは分かってたけど、どうやら育成で取るらしいという情報だったんで部長に報告。それなら7位でイケるなという念押しに、「大丈夫。イケます!」なんて威勢よく返事をしてたもんだから、バツが悪いったらありゃしない。
会議が終わって、控室に戻ってきた部長の視線の冷ややかなこと。嫌みを言われたり、説教されたりしたわけじゃないけど、オレも同僚も最後まで部長とは目を合わせられなかった。それどころか「1年間、ご苦労さん」という部長の挨拶が終わるや否や、「お疲れさまでした!」って脱兎のごとく控室を後にしたんだ。
(プロ野球覆面スカウト)