著者のコラム一覧
山田一仁フォトジャーナリスト

1957年1月1日生まれ。岐阜県出身。千葉大工学部画像工学科卒業後、文藝春秋社に入社。フリーランスとして五輪はロス、ソウル、バルセロナ、シドニー、カルガリ、リレハンメルなど取材。サッカーW杯は1990年イタリア大会から、ユーロは1996年英国大会から取材。89年のベルリンの壁、ルーマニア革命、91年ソ連クーデター、93年ロシア内紛、95年チェチェン紛争など現地取材。英プレミアリーグの撮影ライセンスを日本人フリーランスカメラマンとして唯一保有。Jリーグ岐阜のオフィシャルカメラマンを務めている。

ついにマリンガも非常事態宣言下に…感染予防意識に変化が

公開日: 更新日:

 世界を股にかけるフォトジャーナリストが3月、ブラジルとイングランドを飛び回りながら南米大陸、欧州で新型コロナウイルスが蔓延していく状況を<身をもって>実体験。その様子を時系列に沿ってリアルに緊急レポートする。

 ◇  ◇  ◇

▼3月16日 月曜日

 リオを昼にスタートしたバスに乗って夜、サンパウロに到着した。

 この日、ブラジルサッカー連盟(CBF)がコパ・ド・ブラジルなどの全国規模の大会の中止を発表。さらに州ごとのリオ州リーグ、サンパウロ州リーグが延期されることになった。

 サンパウロ市内の地下鉄駅にも「新型コロナウイルス対策はどうするべきか?」といった車内掲示やホームの掲示板が目立つようになってきた。

 それまで誰もマスクなんてしていなかったのに、10~20人に1人ほどマスクをしている人が目に入るようになった。

 感染予防意識が、少しづつ変わってきた。

 知り合いのブラジル人男性は、よほど新型コロナの感染が怖いのか、レストランに入ってから1回、食事中に2回、そして帰る際に1回の計4回も、レストラン備え付けのアルコール消毒液で手を拭いていた。

 ホテル近くのコンビニに行くと個人営業の小さな店にも関わらず、新型コロナ感染予防にアルコールの消毒液が置いてある。ちなみに日本で良く見られるスプレータイプでなく、ジェルタイプが多かった。

▼3月17日 火曜日

 夜行バスに揺られてサンパウロからマリンガに向かった。距離にして約600キロ。ちょうど東京から兵庫県・姫路までの距離である。これを約16時間かけてひた走る。

 2階席は隣の人との距離が近く、新型コロナ感染の可能性が高くなる。

 シートが飛行機のビジネスクラス並みにフラットになり、席も広いのでより安全な1階席を購入した。割高ではあったが、1列シートを選択したので安全度は高い。

 しかし、残念なことにトイレが2階席の奥にある。取っ手や水を流すボタンは、大勢の人が触れるから感染の危険性も高くなる。トイレから出る際に石鹸で手を洗い、紙タオルは捨てないで手に持って<紙越しに>トイレの水を流すボタンを押し、ドアの取手をつかんで開け、閉じる前にその紙をゴミ箱に捨てる。

 これなら手にウイルスは付かないだろう。

▼3月18日 水曜日

 マリンガに18日の朝に戻り、三都主アレサンドロさん(元日本代表)がかかわっているチームの育成部門の寮で寝泊まりすることにした。

 新型コロナの感染者が増えつつあったリオやサンパウロで知らないうちにウイルスを移されているかも知れない。何日か様子を見ようと思った。

 マリンガでは学校が休校となり、スポーツ活動も中止されていた。

 ファベーラと呼ばれる貧民街が存在しないマリンガだが、新型コロナの感染者が確認されたこともあり、遠隔地出身で寮住まいの選手たちも親元に帰ったので空き部屋があったのである。

 航空機事情は一気に悪化した。

 シンガポール航空のロンドン発シンガポール経由大阪着の帰国便の<シンガポール→大阪>が運休となった。

 新型コロナの影響で日本への観光客が減り、減便されたのだろう。

 航空会社のサイトから直接購入したため、電話で変更手続きを受けてくれる。しかし18、19日の2日間、シンガポール航空の日本支店に何度電話しても、回線が混んでいるようで繋がらない。

 またブラジルの国内線が、3月21日から飛ばなくなる可能性があると聞かされ、私の帰国便であるリオ発リスボン経由ロンドン着のポルトガル航空のチケットを前倒しにしようとパソコンに向かった。

 ところがネット上で航空券代の差額を支払うページなると<エラーが出て変更できない>状態になる。

 何度も何度も繰り返しているうちに希望する便が満席になり、料金がとてつもなく高くなっていく。困ったものである。

非常事態宣言下でもスーパーには品物が豊富

▼3月20日 金曜日

 シンガポール航空のチケットは、20日になってロンドン事務所に電話が繋がり、シンガポール→羽田に変更することで決着した。

 ともあれ新型コロナの感染拡大でブラジル政府が<人の移動>を制限するようになった。

 三都主さんから連絡が入って「バスターミナルで確認したら、20日から長距離バスが運休する」ことが判明した。

 私は23日夕方、リオを飛び立つ予定にしているが、サイトで確認すると<23日月曜から週2便に減便になる>と記されているではないか。

 前日の22日中に「余裕を持ってリオに移動した方がいい」。これまで世界を旅してきた経験値が「是非そうしなさい」と私に促してくる。

 しかし国内便のラタム航空のサイトを開いてもマリンガ発リオ着のチケットを購入できない。困ったものである。

 ランチを取ろうと街に出ると、昨日までやっていたレストランが閉まっていた。雑貨屋もクローズである。開いているのは薬局とスーパーだけ。

 ついにマリンガも非常事態宣言下に置かれた。

 スーパーで食料品を購入。もっとも日本のようにトイレットペーパーが売り切れになっているわけでもなく、品物は豊富にそろっている。

 支払い用レジでは、リーダー格の女性がレジ係に新型コロナ防止用の手袋を支給していた。

 そうだ! レジ係は1日本当に多くの客を接客する。しかも紙幣やコインを扱っているので最も感染の危険があるのはレジ係の女性たちだ。

 日本はブラジルより先に新型コロナ感染騒動が起きたのに、スーパーではレジ係の人は手袋をしていない。これは是非とも見習うべきだろう。

 国内線は相変わらずサイトがつながらない。購入できないままである。

 もう最後の手段だ。マリンガ空港に行き、チケットカウンターで直談判である。空港に行くと幸いにもゴル航空のカウンターが開いており、22日のマリンガ朝発クリチバ経由リオ着を購入できた。「早朝便は本当に飛ぶのか?」と聞いた。すると「飛ばなければ売りません」という返事だった。妙に安心した。

 マリンガ空港内では掃除の女性もマスク着用していた。到着便に対応するためか、白衣を着た医者、検疫官らしき数人が到着口に消えていった。空港にはアルコール消毒液が設置され、到着便の情報が表示されている電光掲示板には<コロナウイルスの症状>が、それこそ子供にも分かるように絵で表示されている。

 絵柄で説明するのは絶対に分かりやすい。日本も見習った方がいい。

 明後日(22日)の出発は午前6時半だ。午前4時には起きねば──。=つづく

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