東京五輪開会式“崩壊の引き金”は…お騒がせ中山泰秀防衛副大臣の「通報」だった
「呪われている」としか言いようがない。ついに23日、東京五輪が開幕したが、のっけから暗礁に乗り上げた。開会式の演出の統括役が土壇場で解任。開会式は予定通りというものの、問題人物の仕事がそのまま残るミソを付けた式典になど誰が感動できるのか。しかも、開会式崩壊の“引き金”を引いたのが自民党議員で、菅内閣の現職副大臣というから驚くしかない。
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「ご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くおわびします」
開会式の演出担当だった元芸人の小林賢太郎氏の解任を受けて、大会組織委員会の橋本会長は22日、疲れた表情でこう謝罪した。小林氏は過去に制作したコント内で、ナチス・ドイツによるホロコーストを揶揄。「ユダヤ人大量惨殺ごっこ」と発言する動画が21日からSNSで拡散され、炎上していた。ある大会関係者は「組織委は広告代理店に丸投げして、ロクに“身体検査”しないからこういうことになる」と嘆いた。
過去に行った障害者イジメを雑誌で自慢していたミュージシャンの小山田圭吾氏は「辞任」だったが、小林氏は電撃的な「解任」。前出の大会関係者は「小山田氏の時より組織委の危機感が強かった」として、こう続けた。
「過去のこととはいえ、ホロコーストをネタにしていたのはマズい。スピード解任のきっかけになったのは、米国の有力ユダヤ人人権団体『サイモン・ウィーゼンタール・センター』が抗議声明を出したこと。下手をすれば国際問題にもなりかねないから、組織委は政府とも相談して素早く厳しい措置を取るべきと判断したのだろう」
中山防衛副大臣は人権団体への通報をSNSで報告
組織委の判断に影響を与えた人権団体の抗議声明を“引き出した”のが、自民党衆院議員の中山泰秀防衛副大臣だったとみられている。
「中山氏は、ツイッターの一般ユーザーから小林氏の過去のコントに問題があると相談を受け、その内容をサイモン・ウィーゼンタール・センターに“通報”したようです」(官邸事情通)
確かに、中山氏は日本時間22日午前2時すぎにツイッターで、〈サイモンウィーゼンタールセンターと連絡を取り合い、お話をしました。センターを代表されるクーパー師から、以下のコメントがありましたので、ご報告します〉と投稿している。
サイモン・ウィーゼンタール・センターの公式ツイッターが〈東京五輪開会式のディレクターによる反ユダヤ主義の発言を非難します〉と投稿したのは、同日午前4時前。中山氏の“通報”が抗議声明のきっかけになった可能性が高いのだ。経緯を確認するため、中山氏の携帯電話と事務所に連絡したが、電話に出なかった。
中山氏といえば、過去に、自らをユダヤ人国家と定めたイスラエル寄りの発言をし、物議を醸したことがある。
「中山さんは、副防衛相という立場ながら、イスラエル軍がパレスチナ自治区を空爆しているさなかに〈私達の心はイスラエルと共にあります〉とツイート。イスラエル、パレスチナ双方に共存を促す日本政府の立場から逸脱していると問題視されました。当時は、省内でも落胆と怒りの声が噴出。どちらかといえば、後先考えずに行動するタイプのようです」(防衛省関係者)
結果的に中山氏は内閣と一体化した組織委に弓を引いた形になった。菅首相は小林氏について「言語道断」と批判する一方、「(開会式は)予定通り行うべき」と強調。組織委も予定通り実施すると公表したが、後味が悪すぎる。祝祭感なき五輪は不吉な幕開けとなった。