米球界を悩ませるイスラエルとハマスの軍事衝突 暴力や憎悪を否定する声明を出した裏側
特に欧州や南米のリーグでささいなことから観客同士の衝突が起こる光景が珍しくないサッカーだけに、MLSも事前に無用の混乱を回避する目的で試合会場の統制を図っていることが分かる。
大リーグも例外ではない。球団経営者の多くが支持する共和党も、一定の割合の選手が期待を寄せる民主党やバイデン政権も、いずれも親イスラエルという点では共通しているし、球界にはユダヤ系の経営者や選手も少なくない。
しかし、例えばアラブ首長国連邦、インド、パキスタンを本拠地とする4球団により中東初のプロ野球リーグ「ベースボール・ユナイテッド」が発足し、今年11月に最初の試合を開催するという現状を考えるだけでも、球界の対応は難しいものとなる。
すなわち、大リーグ機構が直接関与していないものの、機構が望む未開拓の地での野球の普及が緒に就く中で、どちらか一方に肩入れすれば、その機運もしぼみかねない。
機構が侵攻開始から3日後にハマスによるイスラエルへの侵攻を非難しつつ、あらゆる暴力や憎悪を否定することで間接的にイスラエルにも自重を促した声明を出したことは、球界の苦悩を示しているのである。