「多様性って何ですか?」羽生祥子著

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「多様性(ダイバーシティー)」という言葉を頻繁に耳にするようになり、取り組みを強化する企業も多い。しかし、そもそも多様性とはどのようなことを指し、どう取り組めばよいのか。本書ではSDGs17のゴールすべての礎とも言える多様性について、世界と日本の現状や企業の取り組み方などを解説している。

 多様性が指し示すもっとも代表的な属性が性別であり、日本の企業では組織を構成する男女比率に着目することが多い。しかし世界に目を向けると、性別はもちろん民族や国籍、宗教、LGBTQといった性的マイノリティーも概念として入ってくる。

 近年、経済界における多様性の動きで注目されたのが、金融大手ゴールドマン・サックスが行った投資表明だ。それは「ダイバーシティーをもたらす人材が取締役会に一人もいない企業の上場は支援しない」というもの。ナスダックも上場企業に対し、女性、人種、性的多様性を含む人材を取締役に登用することを義務付け、不採用の理由を説明しない企業は上場廃止とするという方針を明らかにしている。

 一方、日本はどうか。世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数では、日本は対象国156カ国中120位で“ジェンダー不平等な国”となっている。高等教育を受けた人が得る経済的リターンの調査では、日本の男性がOECD諸国の平均値以上のリターンを受けているにもかかわらず、日本の女性は平均値の4分の1以下と極めて低いことも分かっている。

 多様性が低い組織では、実力の過大評価やリスクの過小評価が起こりやすいと本書。職場復帰支援やイクボス研修など、多様性を高める取り組みの始め方なども紹介している。

(日経BP 1980円)

【連載】ポストコロナの道標 SDGs本

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