餓死を招くケースも リハビリにおける栄養管理の重要性
リハビリにおいて、栄養管理が非常に重要だと考えられ始めたのは2010年以降でしょうか。私が「リハ栄養」に関する本を出したのがきっかけになったと思います。
私自身、医学教育で栄養についてしっかり学ぶ機会がなかったこともあり、かつては栄養に対してほとんど関心がありませんでした。多くの医者が今でもそうでしょう。
そんな私が栄養の重要性を意識したのは、ある高齢の患者さんの死がきっかけです。
その方は脳梗塞でリハビリをなさっていた方でした。脳の働きは正常でしたが、脳梗塞の後遺症で体のバランスを取りにくくなっており、さらに重度の嚥下(えんげ)障害がありました。
「リハビリを一生懸命やって、早く自宅復帰をしたい」
その一念で、非常に熱心にリハビリに取り組んでいました。ところが、リハビリをやればやるほど、どんどん痩せていく。飲食ののみ込みがうまくいかないことと、栄養管理が悪かったことが原因です。
私はリハビリの訓練量を減らし、摂取エネルギーを増やしてもらうように主治医に依頼しました。ところが、「まずは太ってもらわなければ」と思った時点で、すでに時が遅かったのです。栄養状態を改善できないまま、その患者さんは餓死されました。栄養管理をきちんとしていれば、死ぬことがなかった患者さんでした。