日光は“クスリ”…エネルギー工場のミトコンドリアを元気にする
■1日最低20分は日光を浴びる
興味深いのは、ブルーライトに長期間さらされると血糖値の調整不全が起こりえるなど、健康に長期的な影響を及ぼすことが報告されていること。近年普及が目立つLED照明が赤色をほとんど発光しないことから、研究チームは公衆衛生上の問題も投げかけている。なお、これまでの研究で約650~900ナノメートルの長波長光がミトコンドリアを活性化し、ATPの産生を増加させ、血糖値を下げ、動物の健康寿命を改善することが実証されている。
「じつは、ミトコンドリアの機能は社会的に失明第1位の緑内障に関係するとの見方も出てきてます。緑内障は眼圧で視神経が障害され、脳に情報が伝わらず視野欠損が起きるとされる目の病気。しかし、眼圧が正常でも発症することから、加齢によるミトコンドリアの減少、機能低下が緑内障に影響している可能性があるのです」
実際、網膜の神経線維は体内で最も多くエネルギーを使う組織であり、ミトコンドリアが大量に存在している。一方、緑内障の網膜の神経線維には初期であってもミトコンドリアが少ない。このことから、緑内障の背景には、加齢などによりミトコンドリアが減少し、網膜の神経線維がエネルギー不足になり、眼圧で障害されやすい状態に陥っていると考えられているという。
「私たちは近年、人工光に囲まれて生活する環境が常態化して、本来、人間のクスリとなる太陽光から遠ざかりつつあります。最低1日20分程度は太陽光を浴びることが、健康長寿に役立つのです」(つづく)