金融庁がコベナンツ開示を義務付けへ…銀行側が消極的、そのワケは?
財務基盤の維持・安定性や収益力の持続性に、いまひとつ自信が持てない企業や経営者からは悲鳴も上がりそうだ。金融庁が上場企業に対し、銀行から融資を受ける際に結んだ特約事項=財務制限条項(コベナンツ)の開示を義務付ける方針を打ち出した。
今年4月1日付で企業の情報開示に関する一連の内閣府令を改正・施行。2025年4月以降に提出する有価証券報告書(有報)などから記載を求める。企業の信用リスクをより正確に把握できるように可視化させることで投資家保護などにつなげる。
コベナンツは企業が資金調達の際に銀行に差し出す“誓約書”のようなものだ。純資産や自己資本が直近決算期末の水準を一定以上下回ることがないようハードルが設定されていたり、連続営業・経常赤字に陥らないよう確約を負わせているものが多い。条項に抵触すれば期限の利益を失って即時一括返済や金利優遇措置打ち切りといったペナルティーを科される可能性もある。
企業にとっては何とも「ストレスのかかる仕組み」(中堅自動車部品メーカー幹部)だが、複数の金融機関が融資団を組んで資金を供給するシンジケートローンなどではこの特約が付くのが当たり前。中には情報公開義務や事業継続義務などを負わせる特約もある。ただ、上場企業に対して相対融資でコベナンツを課すケースは「それほど多くない」(大手行関係者)といわれている。