史上最弱に成り下がったサッカー五輪代表の「構造的欠陥」

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中途半端なチーム作り

 初戦、2戦目とも日本が主導権を握っている時間帯は多かった。シリア戦のボール支配率は日本の63%。シュート数は日本の22本に対してシリアは8本にとどまった。しかし、日本は大事な局面でミスを連発。試合運びの拙さが致命傷となった。

 サウジ戦は1―1から後半43分、DFの凡ミスから献上したPKを決められた。シリア戦では試合開始9分でPKを与えて0―1とされた。

「森保監督は、なかなかチームの骨子を固めることができず、そのことが五輪代表の完成度の低さにつながった」と前出の六川氏がこう続ける。

「五輪代表にはA代表と違って代表試合出場強制招集ルールがなく、スペインの18歳FW久保らが呼べず、もともとベストメンバーが組めないハンデを森保監督は背負っていた。それでもたとえば国内組を中心に<ベストメンバーを形成する>ことでチームに競争原理を導入することはできたと思います。レギュラー組にサブ組が『ストロングポイントを磨いて試合で結果を残し、森保監督にアピールする』という明確な目標を持つことができるからです。<中途半端な五輪代表チーム作りしかできなかった>状況に置かれたことが、タイでの惨敗劇を招いたと言えるでしょう」

 五輪代表は、これまでテストと称して延べ75人もの選手を呼び寄せ、試合ごとにコロコロと選手を入れ替えた。このことが、チーム作りが遅れた要因にもなった。

■勢い増す解任論

 そもそも森保監督に日本代表と五輪代表の指揮官を兼任させたJFAに「大きな責任がある」とは、元ワールドサッカーグラフィック編集長の中山淳氏。

「18年のロシアW杯で直前に指揮を執ることになった西野前監督体制がベスト16入りしたことでJFAの田嶋会長は<オールジャパン化>などと言いながら、A代表も五輪代表も森保監督に兼務させて<丸投げ>してしまった。ところが現実的には日本代表に専任する形となり、五輪代表は日本代表の横内コーチが代行として采配を振ってきた。このスタイルの弊害が出ています。森保監督が、選手交代などを考えても<自分よりも年長で五輪選手を長く指導している>横内コーチに遠慮し、横内コーチは<正式な指揮官>である森保監督の立場をおもんぱかり……で局面ごとに迅速な判断が求められる選手交代のタイミングを逸している印象があります。この事態を招いたJFA田嶋会長のマネジメント能力に問題ありと言わざるを得ません」

 昨年11月に森保代表をコテンパンにやっつけたベネズエラのドゥダメル監督は、世代別の代表監督を兼務して17年にはU―20(20歳以下)W杯で準優勝した。しかしながら、A代表との兼務はムリがあるという理由で現在はA代表監督に専念している。広島の監督時代にJ1を3度制覇した森保監督だが、代表チームを率いる重責を担うのは今回のA代表・五輪代表の兼任監督が初めて。世界で実績のあるベネズエラの監督でも荷が重いことを森保監督一人にやらせること自体、メチャクチャなのである。

 もちろんピッチでプレーしている選手に「問題はないか?」と問われるとノーと言うしかない。

 JFAの田嶋会長は13日、タイでの視察から帰国して「前提としては森保監督をサポートしていく」とコメントした。しかし、15日のカタール戦を落として3連敗ともなると森保監督解任論、田嶋会長責任論は勢いを増し、すでに更迭論も噴出している。東京五輪イヤーを迎え、日本サッカーの前途は多難である。

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