著者のコラム一覧
岡邦行ルポライター

1949年、福島県南相馬市生まれ。ルポライター。第3回報知ドキュメント大賞受賞。著書に「伊勢湾台風―水害前線の村」など。3・11後は出身地・南相馬中心に原発禍の実態を取材し続けている。近著に「南相馬少年野球団」「大島鎌吉の東京オリンピック」

“オリンピックのサル”なる汚名が猿渡武嗣さんの死期早めた

公開日: 更新日:

 ともあれ、猿渡はオリンピアンとして自負を抱き、意地を張った。“オリンピックのサル”の汚名を払拭するため、残業もいとわず深夜まで働いた。積極的に得意先の接待にも出向いた。上司や部下に対し、言葉よりも態度で示したのだ。

 引退後の東京本社勤務時代から健康管理にとマラソンやジョギングを毎日欠かさなかったが、多忙のためいつしかやめてしまった……。

■詳細なメモを妻に

 新日鉄室蘭に厚生課長の役職で赴任して3年目、82年7月20日。4日間の東京出張に出発する日の朝だ。妻の比都美に普段とは違う態度を見せた。いつもなら宿泊先や誰に会うかなど教えないばかりか、連絡もせずに会社からそのまま出張に出向く。後で妻に電話で伝えるのが当たり前だった。

 ところが、その日はなぜか違った。宿泊するホテル名と電話番号、誰に会うかなどを詳細にメモして妻に手渡し、妻が運転する愛車で室蘭駅に向かったのだ。

 そして、その日の午後に東京本社に着いた猿渡は、夜の会議に出席。前号で述べたように会議後は、久しぶりに会う同僚と好きなマージャンを楽しみ、ホテルにチェックインしたのは翌21日の明け方。人知れず息絶えた猿渡は、その昼すぎにホテル従業員に発見されたのだった。正直、夫の死を知らされたとき、妻はテレビのドッキリカメラのいたずらだと思ったという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  2. 2

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    気持ち悪ッ!大阪・関西万博の大屋根リングに虫が大量発生…日刊ゲンダイカメラマンも「肌にまとわりつく」と目撃証言

  5. 5

    オリオールズ菅野智之 トレードでドジャースorカブス入りに現実味…日本人投手欠く両球団が争奪戦へ

  1. 6

    阿部巨人が企む「トレードもう一丁!」…パ野手の候補は6人、多少問題児でも厭わず

  2. 7

    乃木坂46では癒やし系…五百城茉央の魅力は、切れ味と温かさ共存していること

  3. 8

    初日から無傷の6連勝!伯桜鵬の実力を底上げした「宮城野部屋閉鎖」の恩恵

  4. 9

    新潟県十日町市の“限界集落”に移住したドイツ人建築デザイナーが起こした奇跡

  5. 10

    トランプ大統領“暗殺”に動き出すのか…米FBI元長官「呼びかけ」の波紋