エミン・ユルマズ氏「2050年日経平均は30万円に」超少子高齢化の日本が劇的復活するワケ
今世界がインフレに見舞われる中、日本では依然として給料が上がらず、GDPはドイツに抜かれ4位に転落。類を見ない少子高齢化、人口減少、さらに国の債務、年金、医療など、問題山積みで悲観論が渦巻く中、「日本の将来は明るい」と語るのが、トルコ出身のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏。なぜ一人負け状態の日本が劇的に復活するのか──。
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日本はバブル崩壊後の“失われた30年”と言われる長期低迷を経て、経済的に他の先進国のみならず新興国にも出遅れ、日本人の多くは将来を悲観していると思います。しかし、私の見方はだいぶ異なります。
デフレからインフレへの転換に伴い、これから日本人の給料は上昇。さらにグローバル資本が殺到し、2050年日経平均は30万円に──。多くの人にとって、私が唱える“日経平均30万円説”は荒唐無稽に聞こえるでしょう。
これから黄金期を迎える日本の鍵は、実は国力低下の要因とされる“人口減少”です。なぜこれから日本が復活するのか。その理由をお話ししていきます。
まず日本はすでに“失われた30年”を脱し、黄金期に突入しています。黄金期のスタートはアベノミクスが始まった2013年なので、すでに10年が経過しています。13年を起点に株価上昇は10年続き、日経平均は2009年3月10日につけた最安値7054円98銭から4倍超に。しかし、これが2050年まであと30年ほど続くので、まだまだ序の口です。
まず何が世界経済に影響を及ぼしているのか、大きな枠組みでとらえなくてはなりません。私は最大の要因が地政学だと考えています。歴史を振り返れば、それは明らかです。
日本は戦後、朝鮮戦争(1950年)の特需をきっかけに高度経済成長していきましたが、その背景に米ソ冷戦がありました。日本や西ドイツ(当時)を共産主義から守り、経済的に豊かにしようという米国の方針が恩恵をもたらしたといっていいでしょう。日独が人的資源に恵まれていたことも大きいですが、この地政学的追い風がなければこれほど短期間で経済成長は達成できなかったでしょう。
■日本が長期低迷に陥った背景と反転の兆し
それが一転するのが、1990年です。ソ連やベルリンの壁の崩壊が象徴する冷戦の終了で、日本は地政学的な重要性を失ってしまいました。日本の資産はバブルで割高になり、グローバル資本が成熟しきった日本市場から一気に引き上げ、中国や旧ソ連に向かいました。これがバブル崩壊後の長期低迷の背景です。
半導体のドミナンス(支配)など、80年代後半からの日米貿易摩擦に代表されるように、日本に吹いていた追い風が向かい風に変わり、日本バッシングが起こりました。日本人は自虐ネタが好きですが、歴史を振り返ると、どの民族の繁栄も低迷も自分たちの力量だけではなく、地政学的要因が大きかったと言えます。
さらに、戦後の好景気や株式市場の大相場は、1950年から90年までの40年、低迷は90年から2013年までの23年続きました。それ以前(1878年~1943年)の発展、低迷も、それぞれ40年、23年というサイクルで動いていることがわかります。13年から2050年の日本の黄金期は、発展の40年サイクルに当てはまるのです。
今世界の中で日本にアドバンテージがあるのは、地政学的な風向きが再び日本に吹き始めているからです。“米中新冷戦”と呼ばれる新しい体制に入った13年からの動きを見ると、第2次安倍内閣でアベノミクスが始まり、習近平が中国国家主席に就任。14年にはロシアによるクリミア侵攻。さらに現在、ロシアとウクライナ、パレスチナとイスラエル、中国と台湾と、東西で戦争や紛争が激化し衝突が懸念されています。
新型コロナのパンデミックをきっかけに欧米諸国と中国の関係はより悪化し、実質、鎖国状態となった中国からグローバル資本だけでなくサプライチェーンが逃げ出しています。それがどこに向かうかというと、代わりになる国はそうありません。ある程度インフラや人材が揃っていて製造業が盛んな国となると、結局日本しかないのです。
特に今“21世紀の原油”と言われる半導体の生産が、台湾に集中しすぎてしまっています。懸念される台湾有事が勃発すれば、生産がストップするリスクが高いのです。そのため、台湾のTSMCが熊本に工場を作ったように、半導体特許の大半を握る米国政府は生産をもう一度日本に戻そうと躍起になっています。今後、台湾の半導体生産拠点の半分以上を日本に疎開させると思われます。