米大統領選でガラリ…オバマ政権とトランプ政権から考えるイランとの関係 国際情報の専門家が分析
こうした点から締結されたのが、2015年の「イラン核合意」です。当時の米大統領だったオバマ氏は、イランの言い分を受け入れました。「分かった。では、監視付きでイランの核開発を進めさせよう」と提案し、約束が守られていれば段階的に経済制裁を解除していくと理解を示したわけです。国連安全保障理事会の常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国およびドイツの6カ国とイランは、こうしてイラン核合意を履行しました。
ところが、オバマ氏の後に大統領になったトランプ氏は、「イランは約束を守っていないのに、経済制裁が緩和されて財政が豊かになっていく。一方的にイランにとって都合のいい合意である」として、「イラン核合意」を離脱します。
トランプ氏とイスラエルは、イランに対して強硬な姿勢を取り続け、ついにはイランの脅威を抑えるために、前述したアブラハム合意を締結させます。イスラエルとアラブ諸国が対立していても、パレスチナ問題は解決しない。だったら、手を取り合うことで解決の道を探ろうというわけです。
「イランのような過激な考え方を持つ国があることはお互いにとっていいことではないから、ともに包囲網をつくろうじゃないか」 と提案し、暗礁に乗り上げていた中東和平を進めるべく、イスラエルとUAE、バーレーン、モロッコ、スーダンのアラブ4カ国は握手をしたのです。アブラハム合意で交わされた約束は、これまでイスラエルが進めていたパレスチナ、ヨルダン川西岸地区への入植をストップさせるものでした。イスラエル軍は、パレスチナ人が暮らすヨルダン川西岸地区へ勝手に入るや、パレスチナ人の住居やお店を強制退去させていました。「ここはイスラエルが都市開発をします。工場を作るから出て行ってください」。こうした理不尽な入植を、今後は一切やめるように伝えたわけです。