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武田薫スポーツライター

1950年、宮城県仙台市出身。74年に報知新聞社に入社し、野球、陸上、テニスを担当、85年からフリー。著書に「オリンピック全大会」「サーブ&ボレーはなぜ消えたのか」「マラソンと日本人」など。

錦織圭に「32歳の復活」の目 体力低下も技とセンスで観客魅了、課題は気力とサポート

公開日: 更新日:

 その全仏では8年前に錦織と全米決勝を戦った33歳のチリッチが4強、直後のツアー250で同じく腰の手術を受けた35歳のマリーがブブリク、チチパス、キリオスを倒して準優勝……状況は変わっても、変わらないのが戦う固い意志、その象徴がナダルということだろう。

 宿敵ジョコビッチがワクチン問題に振り回されている経緯はさておき、ナダルは膝の故障明けから4大大会の通算優勝記録を単独の22に伸ばした。鉄の意志と表現されるプレースタイルの基礎が完璧な戦略だ。何のために出場するか、何を狙うか、なぜそうするか──妥協を許さぬプレーの足元が固まっている。

 スペインのマヨルカ島で生まれ育ち、一度も拠点を移していないのが最大の特徴だ。

 長いこと叔父トニーがコーチを務め、全仏優勝の経歴を持つ現コーチのモヤも同じマヨルカ出身。6年前には地元にアカデミーを開校し、多くの雇用があるとうれしそうに話す。和風に言えば所属「ナダル(マヨルカ)」で、鉄板の足場の上に戦術が組み立てられている。


 ただ、テニスの魅力は強さ、ランキングだけではない。錦織の多彩な技は世界中のテニスファンを喜ばせてきた。体力は衰えても技とセンスは残り、観客を虜にする力はある。問題は戦い続ける本人の気力、それを支えるチーム体制になる。

 現在68位のフェデラーと対戦すれば、ノーシード同士だろうと間違いなくセンターコートを沸かすのだ。これまで錦織をフルに利用してきたテニス協会には、くれぐれも口を出さないでもらいたい。

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