新型コロナの未来 イヌウイルスから見た世界同時弱毒化の可能性
(宮沢孝幸/京大ウイルス・再生医学研究所准教授)
今回は新型コロナウイルスの未来を占う上で、少し明るい話をしたい。イヌの新興ウイルス感染症の話である。1978年ごろに英国で子犬が下痢や心筋炎で相次いで亡くなる伝染病がはやった。原因は「パルボウイルス」という小さなウイルスであることが分かり、「イヌパルボウイルス2型(CPV―2)」と名付けられた。
当時すでに、ネコで「汎白血球減少症」を引き起こすパルボウイルスが知られており、「ネコ汎白血球減少症ウイルス(FPLV)」と呼ばれていた。CPV―2とFPLVは遺伝的に近い。そこで、FPLVがイヌに感染し、CPV―2になったと考えられたが、CPV―2はイヌには感染するがネコには感染しない。一方、FPLVはネコに感染するがイヌには感染しない。FPLVがイヌに感染しCPV―2に進化したとは考えにくかった。
その後、CPV―2に近いウイルスがアカギツネに見つかり、CPV―2はキツネの近縁種のパルボウイルスがイヌに感染した新興ウイルス感染症であることが分かった。