履けば好記録という打ち出の小槌…厚底ナイキの故障リスク
今年の箱根駅伝に出場した大学のある関係者もこう語っていた。
「後半にバテる選手が少なくなったことは確かですが、厚底を履けば誰でも記録が伸びるというものではない。アキレス腱や足首、膝の痛みを訴える者も多かった。履きこなすためのトレーニングが必要です」
体の構造について詳しいフィジカルトレーナーの平山昌弘氏が言う。
「このシューズはアフリカ勢の走り方を分析して作られたものだと推測します。マラソン指導者はよく、『腕を振れ』と言うが、アフリカ選手のフォームは上半身に無駄な力が入っておらず、腕はリズムをとっているだけ。やや前傾姿勢で骨盤近くから上半身をひねり、その反動で脚が前に出ています。ナイキは体を俯瞰的に見て、上半身と下半身が連動したとき、両足はどう動くのかということに着目したはずです。そこが日本のメーカーとは違うところではないか。ソールに傾斜のあるこのシューズを『坂道に立っているみたい』と表現する人がいる。それはアフリカ勢の走りを研究した結果でしょう」
そういえばあるテレビ番組で、マラソンの日本記録保持者である大迫傑は、アフリカ選手の前傾フォームと自分の立っているフォームとの違いに気がつき、今まで以上に背筋を鍛えだしたと語っていた。もちろん、大迫も厚底シューズで記録を伸ばしたひとりだ。