履けば好記録という打ち出の小槌…厚底ナイキの故障リスク
■前傾、フォアフット、重心移動
前出の平山氏は続ける。
「マラソンは高速化が著しく、短距離ランナーの体の使い方に似てきた。スタートしてから30~40メートルぐらい先のフォームです。短距離選手はかかとを着いて走らない。土踏まずから小指の付け根(ミッド部)、親指の母指球で着地するフォアフット走法です。前傾姿勢のフォアフット走法だと重心移動で走ることができる。右足を出したら左足の動きを呼ぶ走りなのでエネルギー消費が少ないため、30キロを過ぎてからもスピードが落ちない。世界記録保持者のエリウド・キプチョゲ(35=ケニア)はレース終盤でも1キロを2分50秒台前半で走ることができる。だからこの厚底シューズは地面を蹴る多くの日本人の走りには向きません」
■体が追いつかない
さらに平山氏はこう語る。
「日本人の多くは着地部分が、ヒール(かかと)から土踏まず(ミッド)、そして指(フォア)へと3カ所を使う。体幹をうまく使えない人も多い。日本人の中・長距離のトップランナーでさえも、厚底を履くと筋肉に違和感があるというほどです。レベルの低いランナーでもこのシューズを履けばスピードは出るし歩幅も伸びるでしょうが、筋力などがそれに追いつかず、膝やふくらはぎなどの故障につながります」