著者のコラム一覧
早草紀子フォト・ジャーナリスト

兵庫・神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。在学中のJリーグ元年からサッカー誌に寄稿。1994年からフリーランスとしてサッカー専門誌を主戦場に活躍。1996年からは日本女子サッカーリーグのオフィシャルカメラマンを務め、女子サッカー報道の先駆者として幅広く活動した。日本サッカー協会公式サイトで長年、女子サッカーのコラムを担当。現在Jリーグ・大宮アルディージャのオフィシャルカメラマン。「紡 なでしこジャパンが織りなす21の物語」「あすなろなでしこ」「なでしこの教え」など著作多数。

なでしこを追いかけて…オランダ入国は実に呆気ないものだった

公開日: 更新日:

 コロナ禍のご時世ではあるが、意を決して「なでしこジャパン」のオランダ遠征への帯同を決めた。

 すんなり覚悟が決まったわけではない。コロナ感染状況をチェックする毎日。日本のみならず、とにかくオランダ情勢から目が離せない。なぜなら、ヨーロッパは目下、感染再拡大の真っただ中だからだ。

 それでも池田太監督の初陣だ。行くしかない。えいや! と取材申請を提出したその翌日、オランダ政府が部分的ロックダウンを発表した……。

 なんというタイミングだ。それでも国際親善試合は決行されるということで、オランダ出入国に必要な書類の情報を引き出し、準備に取りかかる。どっちに転んでもいいように、渡航用のワクチン接種証明書だけは早々に申請をしておいた。

「今日できることは、なんとか明日にまわせないものか?」精神でやりくりをする私にしては上出来だ。あとは以前から目をつけていたエアーチケットをポチろうとしたとき、一本の電話が鳴った。

 出発予定日(11月21日)の午前中に仕事が入った。オランダから帰国後は、2週間の隔離が待っている。出国までは、働けるだけ働いておこう。こうして直行便に別れを告げ、泣く泣く経由便を手配することになった。

自宅隔離を選択するため成田空港一択

 何はともあれ、約1年9カ月ぶりの海外出張だ。きっと忘れものも多いはず。あとは現地で調達しようと準備もそこそこに空港へ車を走らせた。

 帰国者は公共交通機関の利用が認められていないため、自家用車で乗り付けられる成田空港を選ぶ。帰国した際に車を空港まで持ってきてもらえる。何が何でも自宅隔離を選択したい私には、成田空港一択だった。

 出国当日は狙い通り、早めに着いたし、チェックインを済ませたらラウンジでビールを流し込もう。これが海外出張の一番の楽しみなのである。

 ところが、だ。ラウンジ営業はもうすでに終了したというではないか。これから3時間後に飛ぶというのに!?

 非常事態宣言が解かれ、陽性反応者も減り、世の中が日常を取り戻している風なので……すっかり忘れていた。まだ海外へは、限られた人数しか渡航できない現状を。

「少々混みあってる」機内の実状

 空港はガラガラ。コロナ禍前のそれとはまったく異なる雰囲気が、一歩足を踏み入れると即座に分かる。午後7時の段階で店舗はほぼ閉店。いや、そもそも営業をしていないとみた。

 国内便メーンの羽田空港には人が戻ってきているだけに、成田空港がまだこんな状況にあるとは思ってもみなかった。

「本日は少々混みあっているかもしれません」

 搭乗手続きの際に地上係員の方に告げられたが、搭乗してみれば私のシート列の前後左右には誰も座っていなかった。それはそれでフルフラット状態で爆睡できてラッキーではあったが、これで「少々混みあってる」状態なのだとすれば、緊急事態宣言下の航空各社は、かなり苦労したのだろうと想像する。

 しかし、国が変われば状況は一変する。経由地へ到着すると各店舗が、眩いライトを煌々とさせながらガッツリ営業している。変わったことと言えば、そこにいる全員がマスク着用ということくらいか。

 いろんな国の人が行き交えば、感染対策の受け止め方もさまざまだ。乗り継ぎを待つゲート前でひと際目を引いたのは、全身防護服に身を固めた中国人のご夫婦。マスク、手袋、フェイスガードまで着用している。

 安心を得るなら、ここまでしなければダメか。でも持っている鞄は何にもくるまれてないけれど、そこに雑菌は……いや、それは言うまい。人それぞれなのだから。

ドキドキしながら入国審査へ

 こうして降り立ったオランダ・スキポール空港。ワクチン接種証明書、ワクチン接種に関する申告書、健康申告書などなど必要書類を抱えて、ドキドキしながら入国審査の列を進む。

 さぁ〜何を聞かれるか。ワクチン関連の単語も覚えてきたし、全部答えてやるぞー! と意気込んでいると「何しにオランダへ?」「何日滞在?」「宿泊先は?」——。

 ん? いつもと変わらない。

「はい、次の人!」

 かなり時間をかけて書類を整えたのだけど……オランダ入国は実に呆気ないものだった。=つづく

【連載】コロナ禍 なでしこオランダ遠征帯同記

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」