反町康治氏が語る新生「森保J」と日本代表 歓喜と失意のカタールW杯の舞台裏
反町康治(日本サッカー協会技術委員長)
2022年カタールW杯で森保一監督率いる日本代表は、ドイツ、スペインのW杯優勝国を撃破してベスト16に進出。18年ロシア大会準優勝のクロアチアに敗れ、目標に掲げていた「初のベスト8入り」は逃したものの、日本国内はかつてないほどの「森保ジャパン人気」に沸き返った。
昨年末に森保監督の続投が正式決定。3月下旬に新生・森保ジャパンのお披露目試合も組まれている。「W杯で見えた日本サッカーの課題」「森保監督続投の功罪」「苦手とするPK戦対策」「今後の日本サッカーが進むべき道筋」などを、日本サッカー協会(JFA)技術委員会の委員長としてカタールW杯日本代表の総責任者でもあった、この人に聞いた。
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──カタールW杯から約2カ月が経ちました。
帰国した時の盛り上がりには正直、浦島太郎のような感覚になりましたね。ベスト8という目標を達成できなかったし、水をぶっかけられてもおかしくないと思っていたので(苦笑)。称賛の声には戸惑いもありました。ただ、コロナ禍で苦しい生活を強いられた方に希望を与えられたのなら良かったのかな、と。
W杯を一時のブームで終わらせないために、ここから地道な努力が必要です。本当はサムライブルー(日本代表)の凱旋試合をすぐに開催できればよかったのですが、日程の都合上、3月までは難しい。サッカーを目にしてもらう機会を増やすこと。それが重要ですね。
──W杯で日本代表の団長を務めました。どんな苦労がありましたか?
トレーニングパートナーを務めることになっていたU-19(19歳以下)日本代表にコロナ陽性者が出て合流中止の判断を下したり、長友(佑都=FC東京)や麻也(吉田=シャルケ)といったベテランと会話してストレスの軽減を図るなどいろんなことに目を配りましたね。初めての仕事で緊張感もあったけど、チームが円滑に回るように配慮したつもりです。
実際に試合の視察にも行きました。U-22日本代表の大岩剛監督とブラジル対セルビア戦に行った時には渋滞に巻き込まれて大変でした(苦笑)。コスタリカに敗れた後、ドイツ対スペイン戦の視察に出向き、寺門(大輔)テクニカルスタッフと車中で30分ほどスペイン戦の戦い方について議論したこともよく覚えています。
──W杯決勝のアルゼンチン対フランス戦から見えたものは?
アルゼンチン代表の試合は生でも見ましたが、驚いたのは基本布陣と全く違う場所に選手個々が動き回ること、です。メッシ(パリSG)と最前線を組んだFWのアルバレス(マンチェスター・シティー)が、凄まじく汗をかきながらメッシをフォローしていた通り、まさにシームレス(ここでは複数の位置取りやプレーなどを状況に応じて使い分ける、の意)。多彩な仕事をマルチにこなせる選手が多くいないとW杯上位には行けないと痛感しましたね。
もうひとつ、注目したのは両国代表の所属先です。アルゼンチンの自国クラブ在籍者は1人、米国所属が1人で、(登録26人中)24人は欧州5大リーグ。フランスはケガで離脱していたFWベンゼマ(レアル・マドリード)を含めた全員がそうでした。欧州トップクラブのメンバーとして年間60試合程度をこなしている選手が増えれば、日本のレベルも上がる。3年後にはその領域に近づけたいです。