英リーグで揉まれた長谷川が欧州2連戦で猛アピール なでしこ欧州遠征の収穫
なでしこジャパンはセルビア(日本時間25日・スタラパゾバ)、フィンランド(同28日・トゥルク)との欧州遠征2連戦で4(DF)-4(Mf)-2(FW)システムをベースにし、一段階前の位置で積極的にボール奪って優位に攻撃に転じるスタイルを模索した。
就任当初より、池田太監督の目指す<アグレッシブな守備>をかなり具現化した連係への手応えは掴めた。
■2試合で10得点・1失点の成功体験
ヨーロッパの世界ランク上位国とはレベル差はあるものの、随所にヨーロッパ特有の上手さや強度を垣間見せた2チームを相手に1失点に止め、10ゴールに繋げたことは、成功体験として大きな収穫になった。
ボランチとCBの連係がカギとなり、相手の分析とプレスバランスがハマったセルビア戦は完封勝利。フィンランドに与えた唯一の失点も十分に修正できる要因だ。
今後、選手層と戦術理解のバランスをどうとるのか、池田監督の今後の選択次第で守備成熟度のスピードは加速も減速もするため、今後の判断を注視したい。
長谷川のパスは意表を突き予測不能
攻撃においては個人技、セットプレー、コンビネーション、PK、オウンゴールと実に多彩な形での10得点となった。2ゴールを決めた植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)を含む9名が決定機を仕留めた。
ペナルティ-エリア付近で常に相手DFを翻弄していたのが、長谷川唯(ウェストハム・ユナイテッド)だ。
身体の向きからは予測できない角度で意表を突いたパスを繰り出すのは、彼女の数ある武器の一つではあるが、この2試合ではファーストタッチからアウトプットまでの流れに全く隙がなかった。
昨シーズンは、戦いの場をイタリアから世界屈指のプレイヤーが集うイングランドへ移し、最高峰のリーグで揉まれに揉まれた成果だ。
5月にシーズンを終えてオフ期間の現在、ベストコンディションではないはずだが、それを感じさせないプレーの連発だった。
「真ん中(トップ下)を代表でやらせてもらえるようになったのは大きい。本来自分が生きるポジションをやらせてもらったときに自分の強みである"引き出すプレー"を見せられればと思ってやってます」と長谷川はサイド起用も多い中、猛烈なアピールとなった。
■分析・修正・実行のベクトルがピタリ
今回の欧州遠征では海外で活躍する6名の選手が選出されたが、練習から球際の強さ、球離れのタイミングの良さなど<海外慣れ>を感じさせる瞬間が何度もあった。
それに触発されるように国内組も対応力が上がっていく。分析、修正、実行のベクトルがピタリと合ったことで多くの収穫を得た欧州2連戦だった。
ヘルシンキ市内もマスク姿の人はいない
フィンランド戦の圧勝から一夜明ければ帰国の準備だ。
帰国に必要なPCR検査を受けにクリニックへ向かう。物価の高さは、検査価格にも反映されている。年末にオランダで受けたときの約2倍。もう驚きもしない。
一刻も早く脱出したいという想い、一瞬でも首都を満喫したいという想いの狭間で揺れ動き、陰性証明書は翌日に同じクリニックの空港店で受け取れるように手配する。
大急ぎで首都ヘルシンキへ移動し、街の様子をチェックしようと思って電車でダウンタウンへ。トゥルク同様に街中でマスク姿の人を見かけることはない。
徹夜続きのボロボロの顔を晒してなるものか、と当然ここでもしっかりとマスクを着用。文字通り足を引きずるようにして、お目当てのお店へ。感染予防のためにテラス席を確保し、オーダーしたのはフィンランド名物トナカイ料理だ。
一皿約5000円。これは想定内。ほんのわずかに残る獣的味わいがまた良い。なぜにこんなにも柔らかいのか。赤ワインとの相性も抜群な逸品だった。
帰りにちょっとシュワシュワしたものが飲みたいと、駅の売店でふとコーラに目が留まる。思わず二度見! そのお値段3.50ユーロ(約480円)。何としても飲みたいというところまで気持ちが高まったら、購入することにしよう。
すでに感染予防は過去のものとなった
ちなみに金に糸目を付けないのであれば、空港で約2時間後に結果の出るPCR検査が受けられる。
空港バスターミナルの一角には別の検査用コンテナもあり、検査態勢は万全だ。しかし、ここまで綿密な検査をいまだに必要とする日本ってどうなんだ? と煩雑さに辟易しつつ、毎度のことながら緊張を強いられるPCR検査結果の判明待ち……よし!陰性。
周りはすでに感染予防が過去のものになっている。だからこそ、これまでとは<異なる緊張感>が漂うヨーロッパ遠征だった。(おわり)