著者のコラム一覧
藤田信之日本実業団陸上競技連合顧問

1940年10月、京都府出身。洛北高卒業、京都市職員を経て68年ユニチカ陸上部コーチ、72年監督就任。86年ワコール初代監督、99年グローバリー初代監督、2005年シスメックス初代監督、11年同陸上部顧問退任。現在、日本実業団陸上競技連合顧問。

レース当日まで野口みずき本人にも黙っていた アテネ五輪での“大きな賭け”

公開日: 更新日:

 2004年アテネ五輪本番(8月22日)の5日前に現地に入ると野口の動きはすこぶるよく、完全に仕上がっていた。「調子が下り坂になったらかなわんな」という思いから、1日でも早くレースが始まってほしかった。何度目かの試走のとき、その日はゴールとなる競技場の中に入れる日だった。

「野口、競技場の中を見ていくか」と聞くと、「いいえ。(レース)当日、一番に入りますから」という。

「こんなことよう言うな」と思ったが、野口も調子の良さは実感していたのだろう。

 アテネ五輪のコースは、マラソンの起源となるマラトン市をスタートし、1896年の第1回近代五輪のメイン会場となったパナシナイコ競技場がゴールだった。序盤10キロからアップダウンが始まり、15キロから32キロまで続く急な上り坂が難所だ。上り坂の頂点からゴールまでは下り坂になる。

■25キロ過ぎからのロングスパート

 前年の世界陸上で優勝したヌデレバ(ケニア)以外にも、終盤に強い外国勢は多い。野口は下り坂が苦手なので30キロ過ぎからスパートしても遅い。25キロ過ぎからの厳しい「逃げ」を強いることになる。だが、25キロから上り坂の頂点までは7キロしかない。その間に後続をどれだけ引き離せるか。そしてゴールまでの約10キロでリードを守り切れるか、大きな賭けであるが、メダルを狙うにはこの策しかないと思った。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  2. 2

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  3. 3

    永野芽郁&田中圭の“不倫LINE”はどこから流出したか? サイバーセキュリティーの専門家が分析

  4. 4

    気持ち悪ッ!大阪・関西万博の大屋根リングに虫が大量発生…日刊ゲンダイカメラマンも「肌にまとわりつく」と目撃証言

  5. 5

    オリオールズ菅野智之 トレードでドジャースorカブス入りに現実味…日本人投手欠く両球団が争奪戦へ

  1. 6

    阿部巨人が企む「トレードもう一丁!」…パ野手の候補は6人、多少問題児でも厭わず

  2. 7

    乃木坂46では癒やし系…五百城茉央の魅力は、切れ味と温かさ共存していること

  3. 8

    初日から無傷の6連勝!伯桜鵬の実力を底上げした「宮城野部屋閉鎖」の恩恵

  4. 9

    新潟県十日町市の“限界集落”に移住したドイツ人建築デザイナーが起こした奇跡

  5. 10

    トランプ大統領“暗殺”に動き出すのか…米FBI元長官「呼びかけ」の波紋